博多のサバ
・ 博多のサバ
魚が美味しい博多の町ですが、秋から冬のお勧めはサバです。冷たい風が吹くようになりますと、脂ものってまるまるとしたサバが店頭に並び始めます。煮付け、味噌炊き、塩焼きと美味しい食べ方はたくさんありますが、博多っ子の大好物は「ゴマサバ」です。居酒屋でも家庭でも、博多では定番のメニューなんですよ。
そういう名前のサバもありますので紛らわしいのですが、博多のゴマサバは、真サバを刺身に引いて、擦りゴマをたっぷり混ぜてわさび醤油で食べるもの。そのまま食べるも良し。ご飯に乗っけて丼にするもよし。熱いお茶をかけてのお茶漬けなんて、もう最高ですよ。
サバは生で食べない地域の方が多いようですね。脂肪分が多く体温が高いので腐りやすいこと、またアニサキス(通称サバ虫)が入っていたりするともう七転八倒の痛みだそうですから、ちょっと敬遠されているのでしょうね。
そういえば俳優の森繁久弥さんが生前、アニサキスで病院に運ばれたときもニュースになりましたっけ。相当古い話になりますけど。
アニサキスは、鮮度が落ちると内臓から身の部分に移動するのでなるべく早くお腹を割いて内臓を取り出しておきましょう。
「さばを読む」といいますね。数字をごまかすこと。サバは売りさばく数も多かったので、早く売ってしまおうとして早口で数えた数が実際とは違っていたことからできた言葉です。これもサバが腐りやすいので早く売らなくちゃいけないというところに原因があるんですね。
いくら博多の鯖でも、何でも刺身にしちゃうわけではありません。身が柔らかいので網を引いて捕ったサバはいくら鮮度がよくても刺身にはならないんです。身が割れてしまいますから。玄界灘で釣り上げた、新鮮で身が締まったサバしか食べません。
季節になると博多の奥さまたちは、店頭に並んだサバを指差して「このサバ、ゴマにできるね」って普通に店主に聞いていますよ。博多っ子にとってはサバを生で食べるのはごく当たり前なんです。
鮮度が第一のサバですが、値段が他の魚に比べて安いのも消費者には嬉しいものです。
一匹多めに買って、〆鯖を作ってみませんか。自家製ですと、酢でのシメ具合もお好みで調整できますから。旬の新鮮な真サバで作った〆鯖はご飯にもお酒にも抜群に合いますよ。以前に紹介した、東区箱崎の板前さんから教わった作り方を伝授しちゃいましょう。
サバは3枚に卸し塩をふっておきます。これを冷蔵庫で一日寝かせます。
塩で締まったサバは、酢で塩分を洗ったあと皮をはぎます。皮があると色も悪く食感も損ないますので、薄皮を指でひっばり、紙をはがすように取ってください。
次 に、丁寧に中骨を抜きましょう。なかなか面倒な作業ですが、これをやっておくと食べたときの舌触りが全然違います。骨に沿って軽く包丁を入れると割と取りやすくなります。
下ごしらえができたら漬け込みますが、漬け込む酢は三杯酢です。酢、醤油、砂糖をそれぞれ1:1:1で混ぜたもの。酢で湿した昆布と一緒にサバを漬け込んでください。お好みで鷹の爪など入れてもいいですね。約1日漬け込んだら完成ですが、しっかり締まった方がお好みなら、さらにもう1、2日置くといいでしょう。
さて美味しい〆鯖を肴に、美味しい日本酒をいただきましょう。
昆布の旨さを取り込んで酢の爽やかな風味を楽しむには、吟醸酒がお勧めです。上品な香りと、半分くらいまで磨いた米が醸し出す雑味がないキレの良さが吟醸酒の魅力です。
一口含むと甘味が滑らかに口の中に広がっていき、後からシャープな酸味が刺激となってキレの良さが残ります。〆鯖を肴に楽しむお酒にはぴったりだと思います。
また、脂がのって甘味を含んだサバの豊かな味わいと三杯酢の甘酸っぱいアクセントの調和を大切にしたいなら、ぬるめのお燗酒がお勧めです。特別純米酒や特別本醸造酒など、辛口でキレの良いお酒が良く合います。
お燗にするとふくよかな味わいが増してきますので、吟醸酒でも香りがそれほど主張するものでなければ、人肌くらいでまた違った味わいを楽しむことができます。
(平成22年11月)
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