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放生会と新ショウガ

・ 放生会と新ショウガ

 
 山笠が終わり一息ついて9月になると、筥崎宮では放生会(博多では「ほうじょうや」といいます。)が始まります。
 殺生を反省し、命を解き放つ仏教の儀式だったのですが、日本では神仏混淆(しんぶつこんこう)から神社でも行われるようになりました。全国で行われている祭りですね。

びいどろを吹く女

 放生会になると、箱崎宮では素焼きのおはじきやガラス細工のチャンポンなど、このときだけのアイテムも売られますが、予約も難しいくらいの人気なんですよ。
 ガラス細工のチャンポンは音を楽しむおもちゃですけど、よその地域ではビードロとか、音色からポッペンとか呼ばれているものです。歌麿の浮世絵にも「ビードロを吹く女」がありますよね、あれのことです。

 この時期には山笠にあけくれた男たちが、家を守ってくれた奥さまに感謝をこめて着物を贈る習慣もありました。「放生会きもん(着物の博多弁です。)」と呼ばれて、博多のごりょんさんはその着物を着て放生会を楽しんだらしいです。この習慣って今も残っているのかな。
約500mある参道の両側いっぱいに出店が並び、歩くのも大変なくらいの人出でにぎわいます。通り抜けるとお宮に入りますが、まるでお正月のような賑わいです。

ショウガ

 並んだ出店でひときわ目を引くのが栗と新ショウガ。昔は椎の実なんかも売っていましたが、もう見かけなくなりました。葉っぱつきの新ショウガを下げて歩く姿は放生会の風物詩になっています。
香りもよくさわやかな辛味の新ショウガは、この季節だけのお楽しみです。我が家では千切りにして、しょうゆに浸していただくのが定番です。ご飯が進んで困ってしまいます。
 スライスして甘酢に漬けこみますと、味はもとよりピンクに染まったショウガがとてもきれいですが、これは芽の赤い部分の色素が広がるからだそうです。自然の色なんですね。甘酢は市販のすし酢が甘味もちょうどいいのでおすすめです。

 ショウガなど単体では主菜になりませんが、料理の味を引き立てて食欲を増してくれますね。こうした添え物のことを「薬味」と呼ぶのはご承知のとおりです。ほかにもネギやワサビ、大葉、柚子こしょう、山椒、大根おろしなどさまざまありますね。香りや味の強いものが多く使われますが、西欧ではハーブとかスパイスという言い方をします。
 薬味は植物由来のものですが、肉や魚のクセをとる、消化を助ける、殺菌作用があるなど、もともとは薬草として使われていたものだったので、「薬」の文字がつけられたのだそうです。

 さてお酒の話で締めたいのですが、さすがに薬味じゃ肴になりません。
 薬味を使う料理に共通しているのは、素材のそのものの味を楽しむこと。刺身、冷奴、そば、鍋物など。どれも淡白な味わいにアクセントをつけるために使われることが多いようです。素材の味を活かし、軽快なうまみを持った料理や清涼感を楽しむ料理には、同じ様な個性を持つ軽やかでみずみずしいお酒がよく合います。
 薬味の独特の刺激をすっと収める、辛口のすっきりした生酒がお勧めです。また、華やかな香りと透明感のあるキレを持つ吟醸酒なら、薬味とともに料理を一層美味しく盛り上げてくれるでしょう。どちらも冷たく冷やすと清涼感が生きてきます。

 蛇足ですが、インスタントラーメンなどには、「かやく」と書いた袋がついていますね。乾燥したネギや紅ショウガなどが入っていますけど。野菜や鶏肉、魚貝を炊き込んだご飯を「かやくご飯」と呼んだりもします。
漢字では「加薬」と書きます。もともとは「加薬味」だったものが「加薬」と「薬味」の2つに分かれて呼ばれるようになったといわれております。薬味を加えることと薬味そのものが、言葉として分かれてしまったのですね。
 時代を経るうちに、加薬はメインの食材に合わせるものという使われ方をし始めて、今では香辛料というより具材のことをさすようになりました。

 (平成23年9月)

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