こだわりの地酒と焼酎のお店 高木酒店

清めのお酒と般若湯

・ 清めのお酒と般若湯(はんにゃとう)

 
 大昔からお酒には悪いもの、呪われたものを祓う効果があると信じられており、お祝い事やお清めのときには欠かせないものでした。
 そんな非科学的な・・・などと無粋なことはおっしゃらないで。お酒に込められた古代の人々の素朴な感動が、慣習や伝統となって伝えられてきたのです。

お神酒

 神代の昔、お酒は神様に捧げる神聖なものとして造られておりました。お神酒(みき)と呼ばれるゆえんですね。お酒を飲むと酔いますが、古代の人たちはそうした酩酊感のなかで、神様と交わっていたと伝えられております。
 もう一つ、お酒に宿る神秘の力、これが清めに用いられる大きな理由だといわれているものですが、今でいうところの薬効作用、消毒作用です。
 お酒は百薬の長ともいいますね。適量のお酒は体にもいいことを昔の人は知っていました。けがをしたときにお酒で消毒すると膿まないことも経験で知っていたんですね。

 古代、けがや病気は悪霊のしわざだと考えられていました。悪霊を祓うために、また悪霊がつかないために神聖なお酒を使ったのです。するとけがは腐らずに治ります。そうなるとますますお酒は神聖化されていき、何かを清めようとするとき、人々は普通にお酒を用いるようになりました。
ちなみに塩も同じようなことから、清めるものとされてきました。素晴らしい防腐作用がありますものね。悪霊がつかないから腐らない、だから塩は悪霊を祓うものだと信じられてきたのです。

 さて、お寺の入り口に「不許葷酒入山門」と書かれているところがあるそうです。「くんしゅさんもんにいるをゆるさず」と読むのですが、「葷」は臭いの強い野菜のこと。タマネギやニラなどですね。そうした野菜やお酒は修行の邪魔になるので中に入れてはいけないという意味です。
 仏教の世界には5つの禁止事項があります。殺生(殺すこと)、偸盗(ぬすむこと)、邪淫(いやらしいこと)、妄語(うそをつくこと)、飲酒(酒を飲むこと)の5つですが、最後の飲酒だけはそれ自体が悪いのではなく、飲酒により前の4つを犯しやすくなるので悪いのだという理由だそうです。仏教が日本に伝わり、いつの頃からか、前の4つを犯さなければ飲酒はいいのだ、と考えられるようになりました。

葛飾北斎 北斎漫画 葵上

お酒は仏門では「般若湯(はんにゃとう)」とも呼ばれます。般若といえば鬼の面を思い出しますが、本来の意味は悟りを開いた知恵のこと。とってもいい言葉なんですね。ですから僧侶たちは、お酒は酔うためのものではなく、知恵を得るための湯なのだという意味で「般若湯」と名付けて飲んでいたそうです。なんだか言い訳っぽい気もしますけど(笑)
 ちなみに鬼の面を般若と呼ぶのは、源氏物語に由来するといわれています。ヒロインの「葵の上」が恋敵の「六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)」の嫉妬に悩まされ、彼女の生き霊にとりつかれたとき、般若経というお経を読んで退治したことから、怨霊の面を般若と呼ぶようになったそうです。

 お酒とお寺の関係は実はとても古く、密接なものがあります。
 日本酒の歴史はとても古いのですが、多く飲まれだしたのは平安時代です。そしてその背景には「僧坊酒(そうぼうしゅ)」といわれる、寺院で造ったお酒のネットワークがありました。相当に高度な製法で造られており、特に奈良の寺院で造られたものは「南都諸白(なんともろはく)」と呼ばれ、最高級品としてもてはやされました。
 このお話は長くなりますが、けっこう面白いのでまた次の機会にさせていただきます。

 時代の流れとともに様々な文化の形が現れてきましたけれども、文化は人々の生活の中から生まれるものだとすれば、そこにお酒の姿が見えるのも当然といえるのでしょうね。

 (平成24年8月)

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